◆正常先の定義 正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいいます。 銀行が自己査定を行なうに際しては、まず業況、財務内容、資金繰り、収益力等の債務者の定量面の検証と、貸出条件、債務の履行状況(延滞状況)等による回収可能性の検証から総合的に債務者区分を判断することになります。 ◆正常先かどうかの判定 具体的には、 1)売上高の推移(前期、前々期等との比較) ⇒ 大幅な減収の場合、改善の見込みがなければ正常先との判定は困難です。 2)利益の状況(赤字ではないか、前期、前々期等との比較) ⇒ 大幅な減益でも赤字でなければ、正常先と判定される可能性は大きい。この場合の赤字とは、経常利益あるいは当期利益のいずれかでも赤字の場合をいいます。 3)長期借入金の償還財源(キャッシュフロー)は確保されているか ⇒ 償還財源 = 税引後当期利益 + 減価償却費 ≧ 長期借入金の年間返済元金 たとえ黒字でも、償還財源が確保されていなければ、正常先との判定は困難です。また逆に赤字でも、償還財源が確保されていれば正常先と判断される可能性はあります。 4)繰越損失や債務超過ではないか ⇒ 繰越損失があったり、債務超過では正常先との判定は困難です。 5)資産内容に問題はないか ⇒・不良在庫や回収不能の売掛金や受取手形があれば正常先との判定は困難です。 ・棚卸資産は過大ではないか、過大であれば正常先との判定は困難です。 ・仮払金、貸付金の内容に問題はないか、問題あるなら正常先との判定は困難です。 ・有価証券や土地で含み損はないか、含み損があり、実質債務超過になるなら正常先との判定は困難です。 6)減価償却費に償却不足はないか ⇒ 減価償却不足があるなら正常先との判定は困難です。 7)貸出金の返済状況 ⇒ 1ヶ月以上の延滞は、正常先との判定は困難です。(1ヶ月未満は正常先と判定される可能性は大きいが、頻繁に延滞が発生している場合は正常先との判定は困難です) 8)貸出金の資金使途 ⇒ 旧債肩代わり資金、関係会社に対する支援資金等あれば、正常先との判定は困難です。 9)貸出条件 ⇒ 貸出金利の大幅な引き下げ(金利減免とみなされる)や長期借入金で最終回の返済額が合理的な理由なく多額(最終回しわ寄せ)の場合、正常先との判定は困難です。 10)手形貸付で長期間にわたる書替(いわゆるコロガシ)はないか ⇒ 3回以上もしくは1年以上にわたる書替となっていれば、正常先との判定は困難です。 ただし、正常な運転資金の範囲内であれば正常先と判定してかまわない場合もあり ます。 正常な運転資金とは? 正常な運転資金とは、金融検査マニュアルでは「正常な営業を行っていく上で恒常 的に必要と認められる運転資金」と定義されています。 ちょっとわかりにくいですよね。もう少し具体的に書きます。 正常な運転資金=売上債権〔売掛金+受取手形(割引手形は除く)+棚卸資産(通 常の在庫商品であっても不良在庫は除く)〕−仕入債務〔買掛金 +支払手形(設備支手は除く)〕 (注)複数の銀行が運転資金を融資している場合には、当該銀行の融資シェアを乗じ て算出します。 11)貸出金の条件変更はないか ⇒ 条件変更していれば、正常先との判定は困難です。 以上が正常先かどうかを判定する場合の大まかな目安です。 正常先の定義はすでに書いた通りはっきりしています。 「正常先とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者」です。 この定義をそのまま純粋に債務者に適用したとき、果たしてどれくらいの債務者が「正常先」と判定されるのでしょう。最近では資本金2,000万円以下の中小零細企業の70%以上は赤字であると言われています。 仮に黒字だとしても、正常先の定義に合致する、いわゆる「優良企業」の割合はどの程度あるのでしょう。この正常先の定義をそのまま当てはめた場合には、おそらく債務者区分が「正常先」と判定される会社は、中小零細企業の場合、ほんの数パーセントしかないのではないでしょうか。 だから金融庁の金融検査では、この定義の解釈をめぐって、金融検査官とは結構激しく議論します。 何と言っても金融検査官は、よほどの優良企業でない限り、基本的には債務者区分をランクダウンさせようと考えていますから。(何度も金融検査を受けましたが、金融検査のたびに、少なくとも私はそう感じました) どうですか? 上記の1)から11)の項目に該当するような要件がなければ、債務者区分は正常先と判断してもかまわないと思われます。 下記の無料レポートでは、正常先についての解説をしていますので、ぜひ参考にしてください。
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