金融検査マニュアルでは、以下に記載するすべての要件を充たしている場合には、債務者区分をただちに「破綻懸念先」にするのではなく、ワンランク上の「要注意先」と判断しても差し支えないものとしています。(いわゆるセーフ・ハーバールールと言われます) 1)経営改善計画等の計画期間が原則として5年以内であり、かつ、計画の実現可能性が高いこと。(業種等の実態に応じて判断する) ただし、経営改善計画等の計画期間が5年を超え、10年以内となっている場合で、経営改善計画の策定後、経営改善計画の進捗状況が概ね計画通り(売上高等および当期利益が事業計画に比して80%以上確保されていること)であり、今後も概ね計画通りに推移すると認められる場合を含みます。 2)計画期間終了後の債務者の債務者区分が正常先となる計画であること。 ただし、計画終了後、債務者が銀行の支援を要請せず、自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、「要注意先」と判断して差し支えありません。 3)すべての取引銀行において、経営改善計画等に基づく支援を行うことについて、正式な内部手続を得て合意されていることが文書その他により確認できること。 ただし、銀行が単独で支援を行うことが可能な場合又は複数の銀行が支援を行なうことが可能な場合は、銀行が経営改善計画等に基づく支援を行うことについて、正式な内部手続を得て合意されていることが文書その他により確認できることが必要です。 4)金融機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等にとどまり、債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものではないこと。 ただし、経営改善計画等の開始後、既に債権放棄、現金贈与などの資金提供を行い、今後はこれを行わないことが確実と認められる場合を除きます。 以上が破綻懸念先のランクアップ要件ですが、セーフ・ハーバールールを適用して債務者区分を要注意先とするためには、経営改善計画が必要であることが、おわかりいただけたと思います。 しかし、中小零細企業では経営改善計画書の作成ができないケースが多々あります。このため「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」では、次のような措置も踏まえて債務者区分を行うことが必要であるとしています。 1)今後の資産の売却予定 2)役員報酬や諸経費の削減予定 3)新商品等の開発計画や収支改善計画等 4)債務者の実態に即して銀行が作成・分析した資料 破綻懸念先の基準に該当する債務者について、銀行の支援を前提として要注意先と判定するためには、査定時に単に口頭での説明だけでなく、いわゆる疎明資料として「経営改善計画書」等の作成・整備が必要不可欠です。 銀行にとってはこうした経営改善支援の取り組みにより、債務者区分のランクアップを図り、貸倒引当金の金額を減らし、それが自己資本比率のアップにつながることになるわけです。 そうした意味からも、今後は銀行の経営改善支援への取り組みは積極化されます。 なお、銀行は経営改善計画書等の進捗状況や今後の見通しの検討にあたっては、業況や財務内容だけでなく、キャッシュフロー分析を非常に重視しています。 このため経営改善計画書等の作成にあたっては、経営内容を改善するための具体的な施策を立案するとともに、財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)をきちんと整備することが大変重要です。
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