■銀行員の決算書チェックポイント@ 銀行員が融資先から決算書を入手した時に、どういうところをチェックするのかについて書いてみますね。 多くの企業は3月決算で、5月には決算が確定します。 ですから銀行が決算書を入手するのは、6月以降になります。 この決算書は企業の財務面での「成績表」であり、銀行にとっては取引先企業の経営内容を把握するのに不可欠な資料です。 融資案件の可否や取引方針を決定するには、その企業の持つ技術力や営業力、競争力、代表者の資質(経営手腕等)などさまざまな面から総合的に分析し、判断することが求められます。 決算書には、企業の一定期間における経営活動の成果が数字として集約されていますから、銀行はまず決算書の入手し、決算内容を分析するという作業をします。 これが企業の実態を正確に把握するための第一歩となるわけです。 私の場合、取引先から決算書を入手する際には、以下の点に注意していました。 @毎期継続して徴求する 新規融資を申し込む際には、「審査必要書類」として過去3期分の 決算書を提出してもらいますが、融資実行後はなかなかスムーズには 提出してもらえない先もあります。そこで私は決算書の徴求先一覧表を作成し、徴求もれがないようにしていました。 なかには、とうとう提出してもらえない取引先もありましたが、そういう先は今後決して新規融資を受けることはできませんね。 A決算書の数字の背景をつかむ これはある程度の融資経験がなければ困難ですが、取引先から決算書を入手した時に単に記載されている数字を見るだけでなく、なぜこの数字なのか、この科目ってなんだ、とか常にその原因や背景に何があるのかを考えながら見ました。 そのためには、その取引先の内容や業界についても頭の中に入っていなければなりませんが、表面に出ていない事実をつかむように心がけていました。 この表面に出ていない事実は、あくまで推測であり、事実ではありませんから、その確認のためには取引先から直接説明を求めることになります。 B今後はどうなるのか 決算書はさきほども書きましたが、企業の一時点での経営結果です。 これだけで企業のすべてを把握することはできません。 まして決算書を入手する時期は、決算期をかなり過ぎてから入手することになります。 入手時には、すでに「過去のもの」となっているわけですね。 ですから私は、決算後の業況、今後の収益見通しなどを聞き取りで把握するように心がけていました。 このほかにも、税務署の受付印があるか、勘定科目の内訳書は揃っているか、別表は添付されているかなどのチェック項目はありましたが、これらの部分は基本的なものですね。 だからみなさんは、決算書を取引銀行に提出する時には、少なくとも上記の@〜Bを頭の中に入れたうえで銀行に出向くべきですね。 現在は、決算書の目的を「信用リスク管理が目的」と思っている銀行員も中にはいると思いますが、私は決算書の中には「取引推進のヒント」が隠されていると思って分析していました。 こう考えることにより、取引先へのあらたな提案やアドバイスが可能になりますから。 ■銀行員の決算書チェックポイントA 決算書をお客様から入手したら、その場でチェックするというのは銀行員としては常識です。 それは当然、礼儀を失するばかりか、信頼も一緒に失ってしまうことになるからです。 決算書はその場で一通り、ザッと目を通し、チェックする、これでお客様も安心します。 ここでは貸借対照表の銀行員がチェックするポイントを簡単に説明しますね。 @資産・負債・資本の構成はどうか 貸借対照表の数字の並びを大まかに見るだけで財務内容の良い会社か、否か、おおよそ判断することができます。 財務内容の良い会社は、一般的に流動資産が多く、短期支払い能力が優れています。そして逆に負債は少なく、純資産などが多いといった特徴があります。 すなわち資産の部は上のほうが大きく、下は小さい。 逆に負債・資本の部は上は小さく、下は大きい、というイメージ図を頭に描いた上でチェックしています。(図が書ければわかりやすいのですが、書けませんでした<(_ _)>) A短期支払能力はどうか 短期支払能力は会社の安全性をみるうえで最も重要なポイントのひとつです。 これを把握する指標としては一般的には流動比率(流動資産÷流動負債)が用いられ、理想値は2倍といわれています。 もちろん、2倍以上あれば申し分ないわけですが、少なくとも流動資産は流動負債よりも大きくなければなりませんね。 B資産の内容はどうか 資産の部は会社が負債や資本をどのように運用しているかを表します。 そこに好ましくないものはないか、それが前期に比べて増加していないか、増加している場合はどの程度なのかをチェックします。 私は、この好ましくない資産のことを「不健全資産」と読んでいましたが、この不健全資産があると銀行の自己査定では、債務者区分は「要注意先」と判定され、新規の融資は基本的には受けることはできません。 たとえば短期貸付金や有価証券、そして仮払金などが増加しているような場合には、その内容がきちんと説明できる資料を補足する必要があります。 C剰余金・任意積立金はいくらか 利益剰余金、資本剰余金、任意積立金を見ることによって、その会社の「質」を把握することができます。 これらは過去の経営により蓄積されたもので、多ければ多いほど会社の質は良好と考えることができます。 D借入金の内容はどうか 短期借入金と長期借入金の金額を前年度のものと比較し、大幅な増加が見られるときは要注意です。その理由は必ずヒアリングしなければなりません。 なお借入金の額を売上高と比較することによって、借入金余力を知ることができますが、その目安は製造業なら年商の2分の1、卸売業等なら年商の4分の1、それ以下であれば余力ありと考えられます。 以上、簡単に貸借対照表のチェックポイントをみてきましたが、私は決算書の数字をみるときは、上位3ケタ未満はほとんど無視していました。無視しても大勢には影響はありませんし、上位2〜3ケタを読むことで速読が可能になります。 ■銀行員の決算書チェックポイントB 最後に損益計算書のチェックポイントを説明しますね。 損益計算書の場合も貸借対照表と同様、2期分以上を比較しながら見ていくことになります。 また付属書類が必要になるという点も同じです。 チェックのポイントは、 @売上高は順調に推移しているか A経常利益は減少していないか B費用と収益の構造はどうか C特別損益に大きな額が計上されていないか D利益処分状況はどうか の5つだと思います。 @売上高は順調に推移しているか 売上高が増加することを「増収」、減少することを「減収」と言いますが、企業の業績は何といっても売上高に反映されます。 売上高は企業の経営努力のほか、景気や取引先の動向などの影響を受けます。 もし、売上高が大きく変動している場合には、必ずその原因のチェックが必要であり、ヒアリング等をすることになります。 A経常利益は減少していないか 経常利益は、売上高に営業外収益を加え、営業費用(売上原価、販売費及び一般管理費等)、営業外費用を差し引いた後に残る利益額で、企業の本来の儲けを表します。 いくら売上高が増加していても、経常利益が減少していれば何にもなりません。ここは必ずチェックされます。 B費用と収益の構造はどうか 経常利益が大幅に増加または減少した場合、その要因をつかむことが必要となります。 それは営業費用の増減となって表れるため、売上原価、販売費及び一般管理費等をチェックすることになります。 売上原価などが増加している場合は、その原因についてヒアリングすることになります。 C特別損益に大きな額が計上されていないか 経常利益の額と税引前当期利益の額を比較し、そこに大きな金額の開きがある場合は特別損益(特別利益と特別損失)の確認が必要になります。 たとえば、土地を売却してその売却益を特別利益に計上し、黒字化工作している場合もあります。 これは本業では利益が出ていないことを表しており、チェックが必要です。 いずれにしても、特別損益に大きな額が計上されているときはヒアリングすることになります。 D利益処分状況はどうか 最終的に残った利益がどのように処分されているかを、利益処分案でチェックします。 役員賞与や配当金がどれくらいの金額なのか、つまり大きすぎないかということをチェックすることになります。 配当金などは前期と比較して金額が安定しているかを確認するのもポイントのひとつです。 以上が、銀行員がみる決算書のチェックポイントです。 簡単に説明しましたが、ポイントは押さえています。 銀行に決算書を提出するときは、事前にチェックポイントについて融資担当者からここを質問されたら、こう答えるということがわかっていれば、スムーズな対応ができると思います。 そしてこのスムーズな対応が、融資担当者に「好印象」を与えます。 しっかりと自分の会社の決算書はチェックしておかなければなりませんね。
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