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中小零細企業の経営者と個人事業主のための
 金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)

金融庁は中小零細企業、個人事業主の債務者区分の判断については、機械的、画一的に金融検査マニュアルを適用してはいけないとの判断から、「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」を作成しました。

金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)には、中小零細企業、個人事業主などのもっている
技術力販売力成長性、さらには代表者の収入や資産等を一体として債務者区分をする必要があることも事例として記載されています。

そこで金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)改正の主なポイントをまとめておきたいと思います。

@債務者(融資先)との意思疎通
金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)では、
融資先との密度の濃いコミュニケーションを図ることにより、適切な経営実態を把握しなければならないとされ、銀行では定期的(月1〜2回程度)に主要顧客を訪問し、訪問記録としてデータで蓄積管理しています。

これは金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)において、銀行が収集した融資先の技術力・販売力・経営者の資質等の定性項目を十分に踏まえたうえでの債務者区分であれば、それを尊重するとの見解が出たためです。

それで銀行は定期的に融資先を訪問し、情報を蓄積するようになったのです。
ちなみに、銀行はすべての融資先を訪問できるわけではありません。融資先数も多いですから、とても1〜2ヶ月で訪問できる数ではありません。

だから定期的に訪問する先は、金融庁の金融検査で債務者区分の見解が相違したら大変な先、すなわち
「大口融資先」と「要注意先」以下のなかの大口先などが訪問対象です。

万一、「大口融資先」の債務者区分が「正常先」から「要注意先」に、あるいは「要注意先」から「破綻懸念先」などにランクダウンしたら、引当金や償却の計上が大幅に増え、自己資本比率に大きく影響しますからね。

そうならないためにも銀行は、定期的に企業を訪問し、経営指導等もおこなっているということを記録として残しておかなければなりません。(金融庁の金融検査のためにも)

Aキャッシュフロー重視の明確化
中小零細企業や個人事業主の債務者区分の判断においては、
赤字や債務超過といった表面的な現象のみをもって判断することは適当ではなく、キャッシュフローを重視して検証する必要があることを明確化しました。

具体的には、
長期借入金の償還財源(キャッシュフロー)が確保されているかどうかが重要です。

償還財源 = 税引後当期利益 + 減価償却費  ≧  長期借入金の年間返済元金

B経営者の資質等に関する検証ポイントを追加
従来までは、債務者区分の判断基準にはなりにくかった
定性項目の検証ポイントを具体的に追加し明記しました。

<従来までの評価項目>
・後継者の存在
・人材育成への取り組み
・ISO等の資格取得

<追加された評価項目>
・過去の約定返済履歴等の取引実績
・経営者の経営改善に対する取り組み姿勢
・財務諸表など計算書類の質の向上への取り組み姿勢

C疎明資料範囲の明確化
従来検証ポイントを確認するための疎明資料の範囲を限定的に捉えていた面があったことから、
銀行が債務者管理や自己査定のために用いる資料等を含むことを明確にしました。

金融庁の公表している文章表現を、そのまま使ったのでちょっとわかりにくいので説明します。

銀行では、たとえば融資先が決算から6ヶ月以上経過している場合は、自己査定や債務者管理のために通常は残高試算表等を提出してもらいます。それを参考にし、今期の業況等を予想するわけです。

しかし金融庁の金融検査においては、私も経験がありますが、
残高試算表はまったく信用をしてもらえません。「そんなものは、いくらでも作れる」という態度です。挙句の果てには、「堀さん、もしその残高試算表をもとに予想した来期の業績が全然違っていたら、あんた責任取りますか?」とまで言われたことがあります。

でも今回の改正では、
これらの債務者管理のための資料が認められることになりました。

D経営改善計画等の進捗状況が計画を下回る場合の取扱い
中小零細企業や個人事業主の
経営改善計画の進捗状況が計画を下回る(概ね80%に満たない)場合にも、進捗状況のみをもって機械的・画一的に判断するのではなく、計画を下回った要因について分析のうえ、キャッシュフローを含め今後の見通しを検討することとなりました。

E代表者等からの借入金等の回収意思の確認は不要
中小零細企業の
代表者等からの借入金等については、原則として、当該企業の自己資本相当額に加味することができ、代表者等が借入金等の返済を当面要求しないことについての確認は、検証ポイントにおいて不要となりました。

これは会社のバランスシートの負債の部に代表者等からの借入金がある場合、従来までは代表者等が返済を要求しない場合に限り、
その借入金を自己資本(資本金)とみなすことができました。

そしてその場合には、代表者等から
借入金の返済を要求しないとの「念書」のようなものまでもらって疎明資料として提出しているケースもありました。
しかし、
今後はそういう確認は不要になったということです。

銀行にとっては結構、これが大変だったんですよね。というのも、代表者等からの借入金を自己資本にみなさなければならない会社というのは、債務超過になっている、あるいはギリギリ債務超過でないというところが多いんです。

だから銀行としては、
何とかして借入金を自己資本相当額だと判断して、債務超過を回避させたいと必死になるわけです。しかし代表者等は会社に貸している金は、今は無理でも将来的には返してもらいたいというわけです。

こういうケースでは、
従来までは金融庁は借入金を自己資本相当額とは認めてくれなかったわけですね。この会社の借入金を自己資本相当額と認められるか、認められないかで債務者区分は大きな違いになります。

まして今期の代表者等からの会社の借入金が前期に比べて減少などしていたら、その時点で
「借入金を返済している」ことになり、万事休す、でした。
この部分の改正は、銀行にとっても大きいと思います。

F「正常な運転資金」が認められる
従来まで銀行は、正常な運転資金は正常先と要注意先(場合によっては要注意先も認められなかった)しか認めていませんでした。しかしこれが
破綻懸念先の可能性がある債務者にも認められることになりました。
銀行は金融庁の金融検査で、破綻懸念先の可能性のある要注意先に対する正常な運転資金が認められないばかりに、
債務者区分が破綻懸念先にランクダウンするのを恐れ貸出金の一括返済や分割返済を迫り、新規融資も控えてきたわけです。これが世間では「金融検査マニュアル不況」とまで言われた原因でもあります。よって正常な運転資金が認められた意義は大きいと思います。

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