銀行員がチェックする技術力のポイント

 企業経営において、「技術力」という場合には、大きく次の二つのタイプがあります。

@将来の活用が期待される研究開発技術
A保有する特定技術を用い、モノを作る生産技術

 中小零細企業の場合、一般的に@のタイプの技術を保有している企業は比較的少なく、Aの生産技術に力点が置かれているのが特徴です。
生産技術重視型であることから、生産機能を機軸としたQ(品質)、C(コスト)、D(納期)に与える影響度により、技術力を判断することが多くあります。

顕在的技術力の調査も必要
 生産機能の構成要素にはヒト(人材)、機械(設備)、材料(資材購買)、生産方法、情報があります。
技術力はこれら五つの構成要素の中に、単独あるいは複合した形で現れており、競争力の強さ・弱さを評価することができます。

 このほかに最近では、地球環境を配慮した環境管理、技術力を総合した製品の収益力・キャッシュフローへの貢献度にも注目し評価する必要があります。

(1)人材
 総合的な技術力の発揮の可否は人材次第です。
この項目は四つの項目で評価し、必要な人材が、自分の役割を果たしているかを評価します。

@開発・設計者
□開発・設計者は何人いて(量)、質はどうか
□今期または来期の企業業績にプラスする開発製品はあるか
□会社として技術開発を促進する支援策をとっているか

A製造技術担当者
□生産性、歩留り、製品検査合格率は目標を上回っているか
□工場内の製品を作る過程で一番時間がかかっている工程(ボトルネック工程)を把握し、対策を立てているか

B作業員
□作業員は決められたルールに従い、作業を行なっているか
□業務に必要な能力を把握し、制度化しているか
□熟練技術の伝承の措置がとられているか

C外部人的資源の活用
□公設試験研究機関や大学の活用を行なっているか
□技術コンサルタントの活用を行なっているか

(2)設備・プロセス
 設備は技術的創造を実現する道具であり、製品にふさわしい設備があるか、合理的な手順(プロセス)でモノが作られているかなどを三つの項目から評価します。

D製造プロセス
□製造プロセスが新規導入の場合、キャッシュフロー増加への寄与はどのくらいか
□製造プロセスは同業他社にないものか
□当該プロセスは、取引の拡大、業種の多角化に有効か

E設備
□当社の設備は他社設備と比較して、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)の点で優れているか
□来期以降に設備増強計画がある場合は、キャッシュフローの増加にどの程度寄与すると予測できるか
□どのような付帯設備を保有し、キャッシュフローの改善に寄与するものはあるか
□付帯設備が最近設備されたのであれば、それによるキャッシュフロー増加はどの程度か

F設備保全
□設備保全体制は効率的な方法を採用しているか
□設備の定期的な点検と劣化部位の事前取替えを行なう予防保全(PM)の導入、全員参加による予防保全(TPM)により、前期と比較しキャッシュフローの改善効果があったか。また来期以降も期待できるか

(3)資材購買
 製造原価に占める割合の大きい原材料、外注費のコストダウンを図っているかなどを三つの項目から評価します。

G調達先
□購入資材の調達ルートを変更することで、大幅な材料費減につながったことが最近あるか
□調達にインターネットを利用してコストダウンを図っているか

H外注管理
□外注先への生産管理、品質管理の指導により部品調達のコストダウンが図られているか
□外注品の無検査受入れにより経費が削減されているか
□優れた技術力の外注先を最近採用しているか
□外注先において最近技術改善が行なわれたか

IVE
□コストダウンの手法としてVA(=VE)を実施しているか
(注)VA(Value Analysis : 価値分析)とは製品を機能面から分析し、より低価格で同一機能が得られるような代替材料や生産技術を見つけコストダウンを図る手法。VE(価値工学)も、ほぼ同様の意味です。

(4)生産方法
 生産に必要な管理技術を持ち、業績向上に結び付けているかなどを四つの項目で評価します。

J工程管理
□生産計画に対する実績把握が行なわれ、差異分析が常時行なわれているか
□工場内の在庫・仕掛品が少なく、工程間の在庫は最小限に抑えられているか
□最近納期遅れが減少し、客先評価が高まったか

K品質管理
□品質水準に影響するような生産方法の改善が行なわれたか
□製品検査合格率の大幅な上昇はあったか
□工程の品質向上により、全数検査をやめ、検査費用削減が可能になったか

L物流管理
□社内・社外を含めた総合的な物流合理化の動きがあり、自社の業績向上に寄与しているか
□共同配送等の物流合理化努力でキャッシュフロー増加につながったか

M原価管理
□実際原価計算制度が整備され、実際に発生した原価を把握しているか
□標準原価計算制度を導入し、実際原価との差異分析を行ない、分析結果への対策を立てているか
□直接原価計算を行ない、損益分岐点分析や変動費のコントロール、固定費の計画を立てているか

(5)情報
 情報による技術力は、情報を活用する技術力、情報処理システムを活用する技術力などを四つの項目で評価します。

N特許・ノウハウ
□自社の特許やノウハウを生産活動・業績向上に有効に活用しているか
□特許使用料を支払っているか

O外部技術情報
□外部から技術供与を受けられる関係にあるか、最近受けたことがあるか
□大学・公設試験研究機関と技術支援関係があり、最近受けたことがあるか
□異業種交流を活用し、業績が向上したか

P販売・購買
□インターネット販売を活用し、業績にどの程度貢献しているか
□インターネット購買を活用して、コストダウンにどの程度貢献しているか

Q情報システム
□設計・加工にCAD/CAMを使用し、効果を上げているか
□生産管理システムの活用により、生産性を上げているか
□事務業務に情報システムが活用され、省力化・スピード経営が図られたか

 このほか、技術力は下記の「環境管理」と「製品」についても評価します。

(6)環境管理
RISO・環境問題
□ISO9001または14001の認証を取得済みか、または取得予定はあるか
□企業として環境方針はあるか
□リサイクル活動を推進しているか

(7)環境管理
S市場競争力
□他社製品と比較し、市場競争力があるか
□製品の用途開発を行なっているか

21市場発展性
□主力製品の市場占有率は同業・類似企業と比較して伸びているか
□主力製品を含めて製品の市場は成長しているか
□主力製品のライフサイクルは、現在どの位置にあるのか
□主力製品の代替品はあるか
□主力製品の将来の利益およびキャッシュフローへの貢献はどうか

22次世代製品
□主力製品の次世代製品の準備をしているか
□次世代製品は収益の向上およびキャッシュフローの向上に貢献できるものであるか

23取引先への提案力
□取引先企業(親企業を含む)に改善提案をしたことがあるか。ある場合、それは採用されたか
□取引先の関係者と定期的に打ち合わせ・協議をしているか

 以上が中小企業診断協会の「中小企業の評価マニュアル」の概要です。
実際の評価に当たっては、経営者に直接ヒアリングするほか、必要により各種関連資料を見せてもらい、チェック項目について「○、×、△」などでランク評価します。



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