「販売力」は、財務分析のひとつである一人当たり生産性分析など財務指標からも定量的に把握することができます。 しかし、こうした指標は企業の現在と過去を表すものであって、企業の将来性の評価基準にはなり得ません。 銀行員の融資判断にとっては、企業の現在および将来の成長性、収益性、キャッシュフロー確保の見通しを評価する指標として販売力を評価することが必要となります。 すなわち、定量的な過去の数値では表せない定性的な販売力の評価が求められるわけです。 ■営業力は総合的に評価する 販売力は、次の5つの項目で評価する必要があります。 (1)営業力 営業力は販売力を評価する最も基本的な要因であり、営業部門の総合的な観点から評価を行なうことが必要です。 この項目は、営業システム、営業効率、販売チャネルなど7つの評価項目で把握します。 営業力の評価では、企業の体質、組織、人材配置等の要素をシステム的にとらえる見方が必要です。 @営業システム □全体的・長期的な視点で営業力の強化を図っているか □人員の数と質は競合他社と比較して十分か □営業組織・体制は適正か □社内コミュニケーションは良好に行なわれているか □営業担当者の満足度、勤労意欲、参加意識は高いか □勤労意欲を高めるための客観的で公正な人事考課制度があるか □実績データを把握・分析しているか A営業効率 □各種営業情報の共有化により、営業効率のレベルアップが図られているか □業務の効率化・標準化は進んでいるか □効率化により経費率は削減されているか □固定費の変動費化を進めているか B販売チャネル □自社商品の優良・有望な販売チャネル(販売経路)を持っているか □取引先との関係は良好か □新規顧客・新規チャネルの開拓能力はあるか CIT活用 □ITシステムの構築・運用の目的は明確か □業務分析に基づく適合したITシステムを構築しているか □インターネット活用に取り組んでいるか D配送管理 □コスト競争力のある効率的な物流・配送システムになっているか □専門業者を有効に活用しているか E在庫管理 □商品仕入や原材料・部品調達は通常の場合、過剰在庫や欠品を起こさない仕組みか □在庫は生産計画や物流面で需要変動の大きさに対応できる仕組みか F担当者教育 □教育体系を確立しているか □教育に連動した目標を管理する姿勢や制度があるか (2)商品・サービス 進化・多様化する市場に対応して、ユニークな商品・サービスを継続的に投入できるかが企業の将来の浮沈を決めます。 中小零細企業の強みである機動力を発揮すれば、大きな機会に恵まれる時代になったといえます。 この項目は商品コンセプト(構想)と価格設定の2つの項目で評価します。 G商品・サービス □業界内での自社商品の位置付けを把握しているか □市場ニーズに対応した差別化商品を継続的に投入しているか □迅速な商品開発力、生産体制があるか H価格設定 □顧客の価格感度を重視しているか □商品アイテム別の粗利益率・交差比率、サービスコストを把握しているか □価格設定を見直す仕組みを持っているか (3)市場設定 市場が激変する現在においては、規模の大小や成長率よりも、企業が標的市場や市場での地位を把握して、明確な市場戦略を確立していることが大切です。 この項目は市場動向、競合他社動向などの4項目で評価します。 I市場動向 □市場規模はどの程度か □市場は今後の成長が見込まれるか □対象市場における標的顧客は明確になっているか J競合他社への対応 □取扱商品に関し、強力な競合他社は存在するか □取扱商品は競合他社の商品と比較して、競争力・将来性はあるか □競合他社の優位性を自社に取り込む観点から、その戦略、技術、商品分析等を行なっているか □当該市場への新規参入の可能性はあるか、その場合の競争力はあるか K市場地位 □自社の強み・弱みを把握しているか □将来の市場地位をどのように計画しているか □対象市場における現在の市場地位はどの程度か L立地・店舗 □対象となる商圏・市場を把握しているか □立地のインフラ(社会基盤)は整備されているか □既存立地の適否の検討はなされているか □撤退の基準を持っているか □店舗施設は競争力があるか □店舗の効率性・採算性は良好か (4)顧客 自社のコアコンピタンス(中核的な強み)を見据え、標的とする顧客を明確にすることが大切です。 すなわち、その顧客ニーズを究明して、既存顧客の維持、新規顧客獲得の活動を強化することが重要なのです。 製造業、特に大企業の下請け中小零細企業では、市場激変による大企業の下請け政策の転換に対応して、こうした観点から営業活動を見直すことが必要です。 この項目は、顧客管理、顧客満足度などの4項目から評価します。 M顧客管理 □顧客を管理するシステム・仕組みはあるか □標的顧客を設定しているか □優良既存顧客の維持・確保は十分になされているか □新規顧客を開拓しているか □顧客別売上・粗利・利益管理を行ない、これを活用しているか N顧客満足度 □顧客満足度調査を実施しているか □顧客要求に合った品質を達成しているか □納期の遵守に関して、顧客を満足させているか □価格設定の点では顧客を満足させているか O請求・回収 □与信限度の設定や顧客との契約は、きちんとなされているか □回収への取組み意識は高いか、回収計画の有無とその実行状況はどうか □取引先信用状況を正確に把握しているか Pクレーム・アフターサービス □クレームに対するマニュアルは整備されているか □再発防止策・改善策を立てる仕組みはできているか □情報の蓄積と活用はなされているか □クレーム対応やアフターサービスのための仕組みができているか □顧客対応のレベルは良好か (5)広告・PR活動 標的顧客を見据えて、適切な広告・PR活動を系統的に実施することが大切です。 インターネットの普及は、少ない経費で大きな事業機会を獲得できる可能性を生みました。 これを積極的に活用する姿勢が必要です。 この項目は、ブランド、広告・PR活動の2項目で評価します。 Qブランド □独自ブランドはあるか、それは市場に十分に認知されているか □ブランドイメージは高いか □ブランド維持の努力をしているか □ブランドによる貢献度合いを測定しているか □ブランドを持たない場合、どんな営業活動方針を立てているか R広告・PR活動 □広告媒体とその内容・ターゲット等は適切か □展示会・イベントへの参加、共同販促等を行なっているか □ITをどのように活用しているか □経費の把握、効果測定を行ない、活用しているか 以上が中小企業診断協会の「中小企業の評価マニュアル」の概要です。 実際の評価に当たっては、経営者に直接ヒアリングするほか、必要により各種関連資料を見せてもらい、チェック項目について「○、×、△」などでランク評価します。
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