広い意味での事業計画書には、新規創業や業務改善など経営活動の計画(以下、「事業計画」という)と、活動の結果である業績を中心とした財務計画(損益計画、資金収支計画等を含む)の二つの内容を含んでいます。 この事業計画と財務計画の二つの計画は別々に作成されるわけではなく、広い意味での事業計画を作成する一連の作業のなかで作成されます。 そして、事業計画には、主にどのような経営活動を行なうのかが盛り込まれます。また財務計画には、それらの活動によりどのような結果を目標とするのかが示されます。 それでは、ここからは銀行員がチェックする事業計画書のポイントを見て行きましょう。 ■チェックポイント@ 【企業理念・経営方針等】 企業理念や経営方針には、その企業の社長の「思い」が表されます。 「大事にしている考え方は何か」、「どのような行動をしようとしているのか」、「どのような事業をどのようなお客様に向けて行なうのか」等々、このような質問に正解はありません。答えを計算や分析によって得ることはできないからです。 しかし、企業が強い結束力でひとつにまとまり、一定の方向に向かって進んで成果を上げるためには、企業理念や経営方針等で社長の思いや考えを明らかにし、従業員全員がその思いや考え方を理解して日々の仕事に活かすことが大切です。 逆の言い方をすると、成果の上がる会社を目指のなら、企業理念や経営方針等に社長の会社への熱い思いや考えを積極的に盛り込み、従業員が理解できるようにさまざまな方法で伝えていくことが必要なのです。 ただし、どんなにきれいな言葉遣いで、スマートにまとまった企業理念や経営方針等であっても、他人に作ってもらったものや気持ちの入っていないものではダメです。 銀行員が事業計画書をチェックする際には、社長の熱い思いや考えが企業理念や経営方針等として謳われているかを見ますし、これが重要なポイントです。 ■チェックポイントA 【経営ビジョン】 次に、経営ビジョンについて見てみましょう。 ここでいう経営ビジョンとは、その企業が中心として考える顧客や市場(ターゲット)を明確にし、その顧客が持つ様々なニーズのうち、どのようなニーズに対して、他の会社にマネができないような独自能力を発揮し応えるのかをまとめることと、将来の会社の理想像を会社の状態や業績の面から明らかにすることをいいます。 事業計画の中では、会社の将来に目指す姿が明らかにされていなくてはなりません。 目標がはっきりしないようでは、その達成は不可能だからです。また、目標は明確にイメージできている方が、達成の可能性が高まるといわれています。 したがって、経営ビジョンとして表される将来的な目標は、少なくても「社会の中で、どのような存在価値を持つか(事業価値)」、「どのような状態の会社としたいのか(状態目標)」、「どのような業績を上げていたいのか(計数目標)」の3点ぐらいは明確にしたいものです。 逆に、この3点さえも示すことができないようであれば、目標とする姿にはなかなか到達しないでしょう。 また、このように状態目標と業績目標の二つの目標を持つことにより、具体的な目標達成に向けての事業計画も活動計画(狭義の意味での「事業計画」をいう)と財務計画(損益計画、収支計画等)の二つの計画を作成しやすくなるのです。 ■チェックポイントB 【経営戦略】 経営戦略をチェックするためには、「経営戦略で謳われている活動が、本当に財務的な成果につながるのか」、「それぞれの活動の目標は何か」、また「それぞれの活動が目標を達成するように行なわれているか」を把握しなければなりません。 もちろん、戦略的な活動は企業理念や経営方針、経営ビジョンに沿って計画されていることが大前提となります。また、総花的な経営戦略にならないように、戦略的な活動に優先順位を付け、重要ポイントを絞り込んだ活動を行なうことも大切です。 戦略的な活動を考え出すうえで効果的なのが「SWOT分析」です。SWOT分析とは、その会社の「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」を整理して、強みや機会を活かし、弱みや脅威をカバーするためには、どのような活動を行なえばよいのかを考えるためのツールです。 事業計画をチェックする場合も、計画に盛り込まれた戦略的な活動が本当に重要な活動なのか、それほどでもないのかを判断する際に活用できます。 戦略的な活動内容が不十分だと考えられる場合は、SWOT分析を活用して活動内容をチェックすることになります。 ■チェックポイントC 【中期経営計画・短期活動計画】 最終的には、戦略的な活動をスケジュールに落として、「いつ」、「だれが」、「どの活動を」、「どのように進めるのか」を明確にしなければなりません。 スケジュールを作成する際のポイントは二つあります。 ひとつは、あらかじめ活動がきちんと進んでいるかチェックするモニタリング指標を中期計画の段階から盛り込み、その指標を使ってモニタリングする時期を中期経営計画・短期活動計画スケジュールの両方に組み込むことです。 実際に事業戦略を作成している会社をヒアリングすると、中期経営計画や短期活動計画は作っていても、十分に活用されているケースは少ないようです。このようなことを避けるためには、PDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)のマネジメントサイクルをきちんと回せるように計画段階から設計することが大切です。 もうひとつは、スケジュール化するときに活動内容同士の前後関係をよく考えることと、その会社の能力にあった活動量に抑えることです。 具体的には、顧客情報の活用を計画するなら、少なくても顧客情報が収集されていなくてはなりません。また、顧客情報を収集するためには、どのような情報を、どう収集するかを決めておく必要があります。 活動量については、このような計画を作成するとつい欲張ってしまい、多くの活動を同時に取り組むスケジュールを立ててしまいがちですが、そんなに多くの活動はできません。会社の規模や活動の難易度等にもよりますが、一般的に中小企業では、同時に行なう活動は多くても五〜六つまでに絞り込んだ方が活動は順調に進むでしょう。 中期経営計画・短期活動計画については、以上の2点がしっかり行なわれ作成されているかをチェックします。
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